AIコラム

同じAIを使っているのに、人によって得られる結果の質が全然違う——そんなことを感じたことはありませんか。実は、その違いの大きな要因の一つが「指示の出し方」にあるようです。
観察してみると、AIへの指示の仕方には大きく分けて2つのタイプがあることに気づきます。そして、この違いが最終的なアウトプットの質に大きな影響を与えているのです。
【命令・作業指示タイプ】「〇〇を作成してください」「〇〇について説明してください」「〇〇をまとめてください」
このタイプは、具体的な作業内容を明確に指示する方法です。何をすべきかがはっきりしているので、AIも迷うことなく作業に取り掛かってくれます。
【目的・ガイドタイプ】「〇〇のために、〇〇という目標を達成したいので、以下のステップでガイドしてください」「〇〇という課題を解決するために、一緒に考えてもらえますか」
このタイプは、なぜその作業が必要なのかという目的を最初に設定し、AIにガイド役やパートナーとしての役割を求める方法です。
同じ「企画書を作りたい」というニーズでも、指示の仕方によって結果が大きく変わります。
命令・作業指示タイプの場合
「新商品の企画書を作成してください」 → AIは一般的な企画書のテンプレートに沿って、型通りの内容を生成します。しかし、あなたの会社の特殊な事情や、想定外の制約条件が出てきたとき、うまく対応できないことがあります。
目的・ガイドタイプの場合
「新商品の市場投入を成功させるために、説得力のある企画書を作りたいと思います。まず、どんな情報を整理すべきか一緒に考えてもらえますか?その後、ステップバイステップで作成をガイドしてください」 → AIは目的を理解した上で、必要な情報を聞き出し、プロセスを設計し、状況に応じて柔軟にアドバイスしてくれます。途中で条件が変わっても、目的に立ち返って対応してくれます。
ときには、思いもよらなかった良い工夫を加えてくれることもあります。
この違いの根本にあるのは、方向性を定めながら「AIに考える余地を残すかどうか」です。
命令・作業指示タイプは、決められた通りのことをきちんとやってくれます。でも、少しでもイレギュラーなことが起きると「あれ?なんか違う」「思っていたのと違う」という結果になりがちです。なぜなら、AIは目的を理解していないので、臨機応変な判断ができないからです。
一方、目的・ガイドタイプでは、AIが「何のためにこれをやっているのか」を理解しているので、予想外の状況にも柔軟に対応してくれます。目的という軸があるからこそ、様々な選択肢の中から適切なものを選んでくれるのです。
よく観察してみると、指示の言葉の選び方に、その人のAI活用に対する基本的な姿勢が現れていることもあるように感じることがあります。
命令・作業指示タイプは、AIを「高性能な自動機械」のように扱う傾向があります。「これをやって」「あれをやって」と、まるで指示を受けるだけの存在として見ているのかもしれません。
目的・ガイドタイプは、AIを「一緒に考えてくれるパートナー」として扱っています。「〇〇のために、一緒に取り組んでもらえますか」という姿勢で、協働する相手として接しているように見えます。
そして、興味深いことに、後者の方が比較的精度の高いアウトプットが得られる場合が多いように思っています。
なぜ目的・ガイドタイプの方が良い結果を生むのでしょうか。その理由の一つは、コンテクスト(背景情報や文脈)がより豊かに設定されるからかもしれません。
「何のためにこれをやるのか」という目的を最初に設定することで、AIは全体の方向性を理解できます。そうすると、個々の作業についても、その目的に沿った最適な判断ができるようになるのです。
例えば、同じ「文章を書く」という作業でも、「読者に親しみを感じてもらうため」なのか「専門性をアピールするため」なのか、読者はどんな人を対象としているのかで、適切な文体や内容は全く変わりますよね。目的が明確だからこそ、AIがプロセスを考えたり適切な選択が可能になります。
目的・ガイドタイプの指示を出すときのポイントをご紹介します:
1. 最終的なゴールを明確にする「〇〇を達成するために」「〇〇という課題を解決するために」
2. AIの役割を明確にする「一緒に考えてください」「ガイドしてください」「アドバイザーとして」
3. ステップを踏むことを提案する「まず〇〇を整理してから」「段階的に進めましょう」
4. 途中で軌道修正できる余地を残す「状況に応じて調整してください」「より良い方法があれば提案してください」
AIへの指示の出し方って、もしかしたら実はその人の「AI時代の働き方」に対する考え方を映し出していることもあるかもしれません。
AIを単なる便利な道具として使うのか、それとも一緒に考えてくれるパートナーとして協働するのか。
どちらが正解ということではありませんが、後者の方がAIの持つ可能性をより引き出せるのは確かなようです。
明日AIに何かをお願いするとき、ちょっとだけ「なぜこれをやりたいのか」「どんな目標を達成したいのか」を伝えてみてください。AIからの返答が、いつもより親身で具体的になることに驚かれるかもしれません。
きっと、「指示を出す」から「一緒に取り組む」への小さな変化が、あなたとAIの関係をより豊かなものにしてくれるはずです。
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著者:林 栄一
(林せんせい)
株式会社SHIFT「ヒンシツ大学」クオリティ エヴァンジェリスト
組織活性化や人材開発において豊富な経験を持つ専門家として、人材と組織開発のリーダーを務め、その後、生成AIを中心にスキルを再構築し、現在新人研修プログラムや生成AI講座開発を担当している。2008年にスクラムマスター資格を取得し、コミュニティーを通じてアジャイルの普及に貢献。勉強会やカンファレンス、最近では生成AI関連のイベントに多数登壇している。チームワークの価値を重んじ、社会にチームでの喜びを広める使命をもつ。