AIコラム

生成AIの急速な普及により、私たちの働き方は大きく変化しています。文章作成、資料作成、調査、プログラミングなど、多くの業務が短時間で実施できるようになりました。
しかし一方で、「AIを使うようになってから逆に疲れる」「便利なはずなのに負担が増えた」と感じる人も増えています。この現象は近年「AI疲れ(AI Fatigue)」と呼ばれ、国内外で注目されています。
AI疲れとは、生成AIを継続的に利用することで生じる精神的・認知的な疲労状態を指します。これは単なるパソコン作業の疲れではなく、AIとの対話や判断を繰り返すことで発生する新しいタイプの疲労です。
特に生成AIでは、
など、人間側の判断が常に求められます。
AIが作業を代行しているように見えても、実際には人間が「監督者」「レビュー担当者」として多くの認知負荷を抱えているのです。
(1)AIの回答を検証し続ける負担
生成AIは非常に便利ですが、誤情報(ハルシネーション)を出力することがあります。
そのため利用者は、
を毎回確認する必要があります。
この「レビュー作業」が想像以上に脳のエネルギーを消費します。
(2)AIツールの乱立
現在、
など多数のAIが存在します。
利用者は常に「どのAIを使うべきか」を考えなくてはなりません。
選択肢が増えることで判断疲れ(Decision Fatigue)が発生します。
(3)情報量の爆発
AIは一度の質問で膨大な情報を提示します。
従来は情報収集に時間がかかりましたが、現在は逆に「多すぎる情報を整理する」ことが課題になっています。
情報を読む・要約する・評価する負担が増加し、脳が疲弊します。
(4)AIへの過度な期待
「AIなら完璧な回答をしてくれる」という期待を持つと、
というサイクルに陥ります。
結果として作業時間が増え、ストレスの原因となります。
(5)仕事量の増加
AIで作業効率が向上すると、本来短縮された時間に新たな業務が追加されることがあります。
つまり、
のではなく、
状態になりやすいのです。
AI疲れには次のような症状が見られます。
精神面
行動面
身体面
企業においてAI疲れは個人の問題に留まりません。
AIの成果物チェックに時間がかかり、期待した効率化が得られないことがあります。
利用者が疲弊すると、
といった問題が発生します。
長期間続くと、「AIを学ばなければ」 「取り残されるかもしれない」というプレッシャーが蓄積し、燃え尽き症候群につながる可能性があります。
AIは「アシスタント」であり「代替者」ではありません。
最終判断は人間が行う前提を持つことが重要です。
例えば、
など用途を限定することで負荷を軽減できます。
複数のAIを使い分けるより、「まずはCopilot」 「まずはChatGPT」など主力ツールを決めるほうが疲れにくくなります。
AI利用後のチェック作業を前提にスケジュールを組むことで、焦りやストレスを減らせます。
など、脳を休ませる時間も必要です。
生成AIは業務効率化に大きく貢献する一方で、「AI疲れ」という新たな課題を生み出しています。AI疲れの本質は、「作業者」から「監督・評価者」へと人間の役割が変化したことによる認知負荷の増大にあります。
今後は「AIをどれだけ使うか」ではなく、「AIをどう使い、人間の負荷をどう減らすか」が重要になります。
AIとの適切な距離感を保ちながら、無理なく活用していくことが、これからのAI時代に求められる新しいスキルと言えるでしょう。

著者:皆川 依璃
(みなえり)
株式会社SHIFT「ヒンシツ大学」クオリティ エヴァンジェリスト
主にローコード・ノーコードの分野にてシステムエンジニアとして6年間従事。RPAやMicrosoft Power Platformの開発実績だけでなく研修講師としてサービスの立ち上げから実施、運営まで担当。大手、中小問わず多数の研修をこなす。プロジェクトリーダー経験を活かし、講師の育成や体制・プロジェクト管理など幅広く携わる。また、大手人材会社の新人教育も担当。「初心者に寄り添うわかりやすい研修」がモットー。
車で日本一周する行動力と空手で培った忍耐力、芸術活動で身につけた表現力を武器に社内外問わず積極的に活動している。
2025年、株式会社SHIFTに入社。研修講師の他、ヒンシツ大学の広報活動にも積極的に従事中。